あいちスマートサスティナブルシティ共創チャレンジ インタビュー

あいちスマートサスティナブルシティ共創チャレンジ インタビュー

「課題先進国の課題先進地域、南知多町が愛知県庁と挑戦する新たな生活モデルの創造」(南知多町×愛知県庁×ICMG)

CHALLENGE 3:南知多町をモデルとした世界・都市・地域に生きる新たな生活モデルの創造

 
あいちスマートサスティナブルシティ共創チャレンジでは、愛知県庁、シンガポール国立大学及びICMGが共同で、愛知県のスマートサスティナブルシティの実現を目指した地域課題解決プロジェクトです。設定された4つの課題解決テーマをチャレンジオーナーである旭鉄工株式会社、アイシン精機株式会社、南知多町、中部国際空港株式会社と共に取り組んで頂きます。今回は、その中よりCHALLENGE3「南知多町をモデルとした世界・都市・地域に生きる新たな生活モデルの創造」について、南知多町役場の髙田さん、堤田さん、愛知県庁の辻本さん、森さん、金丸さん、ICMGの佐藤さんにお集まり頂き、オンライン座談会方式でお話を伺いました。
 

-テーマについてお聞きする前に、このプロジェクトを始められた背景を教えてください-

 
:愛知県という地域は、自動車産業で働く方が多くを占めており、税収も支えられています。しかし、自動車産業には、所謂「CASE*」や「MaaS*」と呼ばれる百年に一度の大きな変化の波が来ています。また最近ではテスラの時価総額がトヨタを抜いたというニュースもあり、この地域がこのまま競争力を維持していけるのかという危機感を多くの人が共有しています。
昔から愛知県では、繊維産業や陶磁器といった産業が有名でしたし、現在は自動車産業、航空宇宙産業がありますが、それに続く新しい産業がなかなか生まれてきていません。この地域の競争力維持と新たな産業につながるイノベーションを起こしていくために、スタートアップに着目していこうというのが、このプロジェクトの大きな目的です。
 
※CASE:Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)からの造語
※MaaS:Mobility as a serviceの略で、移動を1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念
 
 

-今回、シンガポール国立大学と協力している理由はどの辺りにあるのでしょうか?-

 
:スタートアップとの取り組みでこの地域を盛り上げていくには海外の先進地域から学ぶ必要がありました。何を学ぶかという議論の中で、シンガポールがスマートネイションという戦略を掲げて発展していることを知り、それこそがスマートサスティナブルシティだと理解しています。
 
辻本:勿論、シンガポールだけではなく、世界各地から貪欲に学んでいこうという姿勢ですが、その中で、人口が増加し拡大している東南アジアマーケットの中心であるシンガポールに今回は注目しました。
 
佐藤:シンガポールは、国家戦略として自国を「未来のビジネスモデルの実験国」としてブランディングしています。実証実験などに対する規制緩和、金銭面での支援、またスタートアップエコシステムの強化など、イノベーションを進める様々なリソースを有しています。
これに加えて、2020年3月にインドネシア政府がデンマークやUNDPと共同してサーキュラーエコノミーを重点政策としたように、東南アジアでは、シンガポールを含め、サステイナビリティな社会への強烈な引力が働いています。スマートシティではなく、スマートサスティナブルシティを目指した政策が様々な取り組みがなされており、日本でいち早くこのコンセプトを愛知県に持ってくるべきだと考えました。
 

 

-では、テーマについてお聞きしたいのですが、ずばりなぜ南知多町だったのでしょうか?-

 
:今回、いろいろな自治体とお話させていただいた中で南知多町となったのは、愛知県の中でも特に社会課題の先進地域だったからです。その為、南知多町でうまくいけば他の自治体にも波及効果があると期待しています。また、担当者さんが大変前向きに捉えてくれたということもあり、すぐに町長にも話が上がったと聞いています。役所という大きな組織の中にあってとても軽やかな対応で、このチームならば高い効果が見込めると思いまして、是非お願いしたいということになりました。
 
 

-南知多町では、なぜ今回のプロジェクトに参加を決められたのですか?-

 
堤田:南知多町では、昭和40年から一貫して人口が減少しており、それにともなって財政状況も悪化しております。国立社会保障・人口問題研究所の推計では30年後には人口が現状の半分以下になり、「消滅可能性都市」ともいわれました。その一方で、行政に求められる社会課題の解決ニーズは年々高まってきおり、現行の行政の取り組みだけでは、全ての社会課題を解決するのは困難だというのが一番の理由です。
特に社会の成熟化と多様化が進むにつれて、高齢化問題や空き家問題、産業振興といった個人や民間の分野の問題が増加の一途を続けています。ステークホルダーが個人や民間になってくることもあり、官と民の共創による新しい課題解決手法を急ぎ構築する必要があると考えました。
今回のプロジェクトでは、日本国内のみならず、海外のスタートアップ、特にアジア圏のエリートが集まるシンガポール国立大学からの提案を受けられるというのは、本町にとっても素晴らしいチャンスだと思っています。それらを踏まえて、町長を始めとした幹部に官民共創の可能性を理解していただいた上で、今回のプロジェクトへの参加を認めてもらいました。
 
 

-これまでに南知多町がおこなった独自の取り組みがあれば教えてください?-

 
堤田:直近のものですと、ヤマト運輸株式会社さん、ICMGさんと実施した「空き家の見守り社会実験」*があります。これは本町が抱える空き家問題の解決策の一つとして、物流企業のネットワークを活用した、空き家の見守りサービスの実施検証と、それに付随した空き家の利活用の展望の検証を目的とした社会実験です。このような取り組みを通して、行政の協力が、企業の取り組みを促進する新しい手法として使えるという発想にもつながったところはあります。
 
プロジェクトの詳細はこちら
https://www.icmg.co.jp/interview-02/
 
佐藤:ICMGからは、私が主担当としてビジネスモデルや実証実験の全体的な設計の面で支援をさせていただきましたが、まさに行政の共創がポイントになった事例でした。
空き家の管理機能を提供できる事業者が空き家のオーナーにリーチできないという課題が、自治体が絡んでいただくことで解決できる(固定資産税の納税通知書を認知手段として活用)という形で双方の強みが生かせる形になりました。
行政の方が普段行われているサービスや業務が、民間事業から見るとものすごく魅力的な資源に見えるということがあり得ます。これまでの常識からすると、それは結びつかない資源でした。一見無理に見えても、一定の制約はあれども、住民の皆さんの利益に還元されるなら、究極的にはやるべきだという考え方で、今回もチャレンジをしていきたいと話しています。
 
 

-今回のプロジェクトを通して成し遂げたい未来はどのようなものになりますか?-

 
:南知多町さんのテーマ以外も含めた、今回のプロジェクト全体の目的としては、この地域のスタートアップエコシステムを築いていくということです。その中でも、この南知多町のテーマで実現したいと考えているのは、社会課題解決の担い手としてのスタートアップという認知を広めていきたいということと、認知をしてももらうための成功モデルを作ることです。DEMO dayを通して、「POC*」を実現し、少しでも地域が良くなったという共感を頂くというところまでつなげられれば一つ成功かと考えております。成功モデルについては、愛知県だけに成果をとどめることなく、日本全国、そして世界に広めていきたいと考えています。
 
※POC:Proof of Conceptの略で、新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした検証やデモンストレーションを指す
 
辻本:愛知県は、他の地域に比べて、多様性に乏しいと色々な文脈で言われています。自動車をはじめとする製造業が産業の中心で、県外から人が来ていないということで、県内大学の地元高校からの進学者割合も日本一。若い人材が内部で還流しているといえますが、裏返すと多様性に乏しいともいえる。今回はシンガポールのスタートアップが参加するというところで、新しいステークホルダーが社会課題やビジネスの担い手として、この地域で活躍できるんだというところを、県内外に向けて発信できればと考えています。
 
 

-南知多町では、どのような未来をイメージされていますか?-

 
高田:南知多町は、先ほど言ったように消滅可能性都市とまで言われましたが、私は絶対になくならないと思っています。この町は、一次産業や観光業など他の町に比べて産業が色々とあります。ただ単に人口が増えればいいという訳ではなく好きだから残るという町にしてきたい。今回のプロジェクトのように外部から提案いただけるという機会は、今後どんどん活用していけるのではないかと思っています。
 
堤田:コロナウイルスの大都市における感染リスクが増大したことで、テレワークのニーズが高まっています。この社会課題の解決策を考えた時に、南知多町でも何かできるのではないか、そしてそれが南知多町の生き残り戦略になっていくのではないかと考えています。そしてこれは南知多町だけが抱える問題意識ではなく、他の自治体でも同じ問題意識を抱えていることでしょう。
ITの普及で大都市だけではなく、どこにいてもオンライン上で議論も出来るし、営業も出来ます。ビジネスを国際的にも出来てしまう。そういった社会になりつつあるので、大都市に住んだり、物理的に移動しなくてもいい時代になりつつある。
そういった世の中において、南知多町のような地域にいてもビジネスがちゃんと回るし、生活できるという新しい生活の在り方を創造することができれば、人が定住して、自治体を維持できるといった未来が掴めるのではないかと考えています。
 
佐藤:ヤマト運輸さんとの実証実験の際にも実施しましたが、この取り組みについても、意義あるモデルが創造できれば、愛知県庁さんと連携した上で全国の他の自治体に「南知多モデル」として発信していきます。
高齢化率など、これから日本は世界が経験したことのない社会になっていきます。同じ船に乗るOne Teamとして、意義のあることはどんどんシェアし、他の地域と共に、共存共栄していく在り方を目指したく、ICMGとしてもそういった視座をもって支援を行いたいと考えています。
 
 

-南知多町だからこそ取り組めるところはどのようなところでしょうか?-

 
堤田:課題先進国日本の課題先進地域として、これから日本全体やアジアが直面することになる社会課題に南知多町は今まさに直面しています。日本の中でもさらに少子高齢化が進んでいること、愛知県でも空き家率ナンバー1、そういった課題を先取りしているのがこの町です。
この危機感の違いが一番の強みになるかと思います。一方で、本年6月に東京ですら人口減少に転じましたので、今後同じ課題を抱える自治体はドンドン出てくると思います。いち早く課題解決に着手できれば、マーケットを先取りできることにもつながるのではないかと考えています。
 
髙田:社会課題を潜在的な資源であり、有効活用できるものだという考え方をして頂いて、行政としても社会課題が民間の資源になるんだというような、社会課題を資源として出したくなるシステムを、今回出すことができれば爆発的に他の自治体にも広がっていくと思います。社会課題の解決のために、民間がボランティアで参加するのではなく、ビジネスパートナーとして入ってきていただくということが1つでも達成できるのであれば、大きく変わってくるのではないかと考えています。
 

 
 

-このテーマでは「官民共創」がポイントになるかと思いますがどのように考えていますか?-

 
:このプロジェクトの中で我々に何ができるかということの1つは、県のネットワークを使って関係する企業と南知多町とのマッチングが1つあると思っております。県の各部署がそれぞれに社会課題を持っているところがあるので、そういう部署にもオブザーバーとして一部参加させてもらうことで、官民共創というこういう手法があるのだということを周知していければと思っています。
 
金丸:官民共創という言葉自体は昔から言われてきていますので、愛知県庁としても官民共創には取り組んできています。しかし、それが本当の意味での官民共創をやれていたかというとなかなか難しいところがあります。行政には行政の文化があって、それは特定の会社の利益になってはいけないとか、住民の皆さんに納得してもらわないといけないなど。一方で民間企業としても、ビジネスベースでの利益がないと付き合いにくい、スピード感が合わないなど弊害があったかと思います。
そのような中で、堤田さんのような方は結構貴重な方です。そういう人と、うまく組めたところでは、より本当の意味での官民共創が進められるのではないかと感じています。行政だけでやれることには限界があります。地域全体を変えるような大きなことは、多くのステークホルダーを巻き込まないとできないという認識が行政にも広がっています。
 
堤田:民間企業の皆さんとも社会を構成する仲間として、社会課題の解決に向けて、しっかり手を結んで一緒にやりたいです。その際に、ただ同じ方向を向いてなんとなく一緒にやるのではなく「是非一緒にやろうよ」という熱を自治体からもっと民間企業に伝えたい。それを受け取ってもらいたいという想いがあります。
 
佐藤:いまグローバルなイノベーションシーンでも、「官民共創」というキーワードが非常に重要になっています。この背景は、イノベーションの質的変化です。これまでは、スマートフォンのソフトウェアのようなものを媒介として、GAFAと呼ばれるプラットフォームサービスが世界を席巻してきましたが、そのイノベーションの波が、物理世界にも浸透していきているのが、ここ数年のトレンドです。
具体的には、今回のテーマの1つでもあるMaaSであったり、遠隔診療に代表されるメディカルの領域などが代表的な領域で、市民の健康、安全、生活に直結することから、規制が強くなっています。その為、このような市民の重要な利益に関するところでは官民共創での新しい社会システムの在り方への挑戦が必要となってきます。
 
 

-このプロジェクトにおけるICMGの果たす役割は?-

 
佐藤:社会課題の解決に向けて、課題の構造的な理解の共有をステークホルダーと進めること、またその理解の上で、持続可能なモデル(ビジネスモデル)を作っていく点で支援をしたいと考えております。
例えば欧州では、自治体と企業がジョイントベンチャーを作るなどの面白い取り組みもありますが、こうした世界中のビジネスモデルや事業スキームと突き合わせていき、南知多町で本当の意味で社会的な意義のある、持続可能なモデルを共創できるように、できる限りのサポートをさせていただきます。
 
 

-参加されるスタートアップや企業へのメッセージをお願いします-

 
:南知多町は、課題先進地域として、日本の課題を先進しているだけではなく、世界の課題を先進していると思っています。それを持ち帰ってもらうことで世界的にも意義のあることだと思っています。そこに参加できるチャンスと捉えて頂ければありがたいです。
 
堤田:マーケットとして自治体を見ることができる、ここが一番の意義になってくると思います。課題は山ほどあるので、やればやるほど新しいビジネスの地盤になる。行政は、「善例主義」が大好きなので、善い成功例があれば、どんどん芋づる式にマーケットを広げていけます。人口が減少する中においてでも、社会課題を解決することができるモデルを作るならば、ビジネスとしての持続可能性も享受できるのではないかと思っています。
ここ数カ月の間に「ワーケーション」や「職住融合」ということでのサービスが次々に発表されているように、様々な企業が事業機会として狙っているテーマである一方、社会の仕組みとしてはまだまだ整備されていないと認識しています。ぜひ、次の社会の在り方の創造にともにチャレンジしたいです。
 
 
皆さま、どうもありがとうございました。
 
 

あいちスマートサスティナブルシティ共創チャレンジ

愛知県内の企業や団体、国内及びシンガポールを始めとするアジアのスタートアップとの共創により、愛知県における”スマートサスティナブルシティ”の実現を目指したプロジェクト。4つのチャレンジテーマが設定され、チャレンジオーナーと共に、課題解決に取り組むスタートアップ企業を募集しています。詳細につきましては、プロジェクトサイトをご参照ください。
https://aichissccc.icmg.com.sg/ja
 
 

南知多町

愛知県知多半島の最南端に位置し、半島の先端と沖合に浮かぶ篠島・日間賀島等の島々からなっている。都市地域への生鮮な魚介類を供給する魚の町・漁業の基地、海水浴や天然温泉が楽しめる観光地である。しかし、愛知県内で最も空き家率が高く、2018年に総務省が実施した調査では空き家率が21.6%に達している。また、同町が2016〜2017年に全建物を対象に行った実態調査によると、町内の空き家候補は990軒。そのうち、老朽・危険なものは77軒あった。
https://www.town.minamichita.lg.jp/
 
 


本件及びSDGsを起点とした事業開発に関するお問い合わせ
株式会社ICMG 担当:佐藤智哉
Mail: sato@icmg.co.jp