【小城武彦】interview:なぜリーダーシップ研修は成果が出ないのか?

2021.06.03

【小城武彦】interview:なぜリーダーシップ研修は成果が出ないのか?

これまでの経営リーダー育成プログラムには大きな課題がありました。それは、せっかく研修を実施しても、事業や組織に期待するような変革がなかなか生じないことです。それはなぜなのでしょうか? そこには、日本企業の経営リーダーシップ開発に構造的な問題があると考えられます。
今回は、その構造的な問題を解き明かしつつ、それを解決する新しい経営リーダー育成プログラム「Future Center Academy(以下、FCA)」について、コーチの一人である小城武彦さんにお聞きしました。

<小城武彦>
ICMG エグゼクティブアドバイザー/九州大学ビジネススクール教授
84年旧通商産業省入省。97年民間に転出し、00年㈱ツタヤオンライン代表取締役社長、02年カルチュア・コンビニエンス・クラブ㈱代表取締役常務。04年カネボウ㈱代表執行役社長(産業再生機構からの出向)、07年丸善㈱代表取締役社長、15年㈱日本人材機構代表取締役社長などを歴任。一貫して企業の変革と再生に携わる。

-これまでの経営リーダー育成における問題とはなんでしょうか?―

まず経営リーダーの育成は、組織を実際に率いて、自らが変革のリーダーシップを発揮した経験のある人でなければできません。世の中には様々なリーダーシップ論がありますが、それを学ぶだけではリーダーにはなれません。特に変革を起こすリーダーは、権限や役職を振りかざすことなく、大きな絵を描き、社員の心に火をつけ、巻き込み、成果を出していかねばなりません。多くの抵抗や反対を乗り越えていくことが必要になります。簡単なことではありません。こうしたリーダーを育成するには、「経験者がハンズオンで」関わることがどうしても必要になるのです。

実際、これを企業でやるとすると、経営者の仕事にならざるをえないのです。しかし、実際問題として、多くの経営者はとてもじゃないですけどそのような時間はなかなか取れません。だから、外部の研修に依存せざるを得ないというのがこれまでの現状であり、問題ではないでしょうか。

-なるほど、では研修での経営リーダー育成には効果がないのでしょうか?―

勿論、そのような研修には様々な工夫がされています。例えばリーダーシップを実際に発揮して変革を成し遂げた人を招いて講演をしてもらう例などが多いと思います。ただ、実際問題として、受講生が研修を修了して組織に戻ってしまうと当初期待した成果が発揮されないということが少なくないと思います。

それは、受講生がせっかく研修で新しい気付きを得て、熱量も高まって組織に戻ってきても、組織内で空回りしてしまったり、周囲の様々な反対や無理解に直面して、徐々に熱量を失い、結局慣れ親しんだ元の組織風土に戻ってしまうからです。そんなケースが非常に多いと思っています。

-組織に戻った時にどのようなサポートが必要なのでしょうか?

本来は、研修を引き継いだ各社の経営陣がハンズオンで支援し、1on1ミーティングなどで、エンカレッジすることができればよいのですが、実際には最初に話したようになかなか時間が取れずに放置されてしまいます。

またリーダーシップは巻き込む力が本質です。研修でも様々に工夫されていますが、それだけで身に着けるには不十分です。研修から組織に戻って、組織を変えよう、仕事を変えようと試行錯誤しながら変革を実現していくことこそがリーダーシップの一番重要なプロセスなのですが、そこに傍で支えるサポーターがいないため受講生は孤軍奮闘状態になってしまっています。

言い換えると、準備運動(研修)をして戻っていくけど、本番(会社の現場)ですべきことや学んだことを実行に移せないというケースがあまりに多いと思います。これがこれまでのリーダー育成の構造的な問題ではないでしょうか?

【経営リーダー育成プログラムの構造的問題】

  1. 経営経験者の関与不足
    経営リーダーを育成できる人は限られるが、忙しくて対応できない。
  2. 現場での変革実現のサポート不足
    リーダーシップの本質である巻き込む力の育成には現場での試行錯誤が必要だが、そこでのサポートがない。

 

-FCAはその問題を解決するためにどのようなプログラムになるのか教えてください―

Future Center Academy(FCA)では、コーチングを中核に据えています。勿論、受講生に合わせてカスタマイズしていくので、コンサルティングやティーチングも入りますが、メインはコーチングです。コーチングでは、受講生と極めて濃密な、頻度の高い1on1のダイアログを通じて、様々な問いを発します。

「答え」ではなく「問い」であることの良さは2つあります。1つは、問いを発せられて自分で考えるということです。考える中で視点が増えたり、視座が上がったり、結果として選択肢が増えて、その中から「自分で答えを選ぶ」。自分で答えを選んだことで、当事者意識や実現する意欲も高まります。

もう1つは、「心に残る問い」を出すことで再現性が高まるということです。コーチングが終わった後も問いは残っていくので、似たような環境に遭遇した際に再現性が高まるのです。コンサルティングやティーチングは、その時のソリューションを提供するので、その場は乗り越えられるけど、次に一人になった時に乗り越える再現性は下がります。

FCA開講式(2021年4月)

-4月よりFCA第1期がスタートしましたが実際にやってみて如何でしょうか?―

良い手ごたえを感じています。問いに対して、受講生が沈黙するので、頭の中で猛烈に考えが巡っていることがわかります。例えば、「一生に一回の人生でなぜこの会社にいるのか?」 「心の底から本当に実現したいことは?」 「今の組織の課題の本質は何か?」という問いに詰まってしまうことが少なくありません。こういった問いを発せられずに、会社の作法やマネジメントに染まっていく中で、自分の個性や思考を抑え込んできたのだと思います。これまでの日本企業は組織の力で勝ってきたので個性を閉じ込めてきましたが、いまはそれでは勝てません。

もう一つは、カスタマイズが大事だということです。受講生のリテラシーレベルによっては、コーチングだけではなく、ティーチングも必要になってきます。伴走の意味はそこにあって、実務の本番で力を発揮するには「知」の部分も当然必要になります。受講生の実務の状況やこれまで積み上げてきたものを勘案しながらカスタマイズしていくことが重要です。

このように、リーダーが組織の中で成果をしっかり出すところまで伴走するのが、このFCAのきわめてユニークなポイントではないでしょうか。

-こういった方に向いているというのはありますか?―

そうですね。例えば、これまでの事業の延長線上に成長の解がないことがわかっている。しかし、組織や事業の特殊性から外部採用してもすぐに成果を上げられるような業態でもない。だから内部のポテンシャルの高い人にリーダーシップを発揮してもらいたい、というような課題をお持ちの企業にはピッタリだと思います。

リーダーシップがなぜ必要かと言えば、「リーダーシップが足りない組織には変革が起きない」からです。今変革を必要としていればいるほど、リーダーの育成、リーダーシップの開発が必要ということになります。

我々はとことん付き合いますので、変革に本気の会社は是非人を送って欲しいですね。
このコーチングは逃げを許さないですから(笑


【Future Center Academy】

ビジネス経験豊富なプレミアムコーチによるコーチングの他、コーチングの効果を加速させる他の研修生や起業家などとの月1回の集合ワークショップや自分の軸を探求する短期合宿、また必要なスキルを補い習得するためのアカデミープログラムの受講等、求められる成果を出すまで伴走するプログラムです。ご興味をお持ちの方は是非お問い合わせください。

【ICMG Groupについて】
ICMG Groupは、創業20年以上に渡り、東京、シンガポール、バンガロール、サンフランシスコ、上海、ストックホルムをベースに、日本大企業のトップマネジメントへのコンサルティングサービス、ベンチャーキャピタル、CVC、デジタル、プロダクトデザイン、リーダーシッププログラム、再生可能エネルギー、脱炭素事業をグローバルで提供しています。また、東京電力・中部電力と再生可能エネルギーや次世代インフラへの投資を行うジョイントベンチャーをシンガポールに設立しており、国連UNDP
とは、SDGsイノベーションに関するパートナーシップを締結しています。ベンチャーキャピタルでは、Sequoia CapitalやGoogle、Tiger Global Management等のグローバルトップVCとシンガポール、インド、東南アジアで共同投資を行っております。また、日本大企業の経営層の持つパーパス、ヴィジョンをデジタルの力に繋げ、社会のイノベーションを加速する株式会社ICMG Digitalを2023年にローンチし、2024年には、元Microsoft米国本社のDirector of Product Design and Research, Frontline Studios GMであったAna Arriola-Kanadaと日本企業のプロダクトデザインを実行するICMG Nextをローンチしています。これらの多様な価値を創出してきたICMG Groupのコアバリューは、常に企業、組織の見えざる価値を可視化し、将来像(パーパス)を描き、その価値創造を実現させてきた知的資本経営(Intellectual Capital Management)にあります。

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